鼻唄クラシック


私的ベストCD'98

 今年は何枚CDを買ったかな。かなり買ってはいるのだけれど、旧譜の再発売盤がけっこう多い。今年買ったCDからベスト盤を選んでみようと思うのだけれど、そういうのは除外することにしよう。
 対象は新録音と、埋もれていた音源を初めて発売した「歴史的演奏」とに分けることにしたい。クラシックではここ数年放送用に録音されていた演奏会のライヴ録音のCD化が多い。それも新譜ではあるのだけれど、新録音と同列に論じるのはちょっと問題があると思うので。

 まず新録音から。一番よかったのは「ヨーヨー・マ・プレイズ・ピアソラ」(ソニー・クラシカル)。クラシックの曲目ではないけれど、ヨーヨー・マのチェロがこれほどタンゴに合うとは思ってもみなかった。クラシック演奏家によるピアソラの決定版として今後も残っていく録音だろう。もっとも、このCDを買ったのは妻で私のCDではないのだけれど。
 あとはどうかな。ギュンター・ヴァント指揮ベルリン・フィル「ブルックナー、交響曲第4番」(BMGビクター)は音楽之友社の「レコード・アカデミー大賞」を受賞した。だからというのではないけれど、これは確かに名演だと思う。私はブルックナーは苦手で全曲聴き通すのが辛かったりすることもあるのだけれど、これは最後まで曲に引き付けてくれた。そういう意味でも名演なのだ。どういう価値基準だしかしこれは。でも、やっぱりブルックナーは苦手であるので名演奏ではあるがそうたびたび取り出して聴くことはないとは思う。
 佐渡裕指揮フランス放送管弦楽団「フランス音楽の祭典」(エラート)は景気のいい「カルメン組曲」が入っててよかったなあ。芸風が師匠のバーンスタインとそっくり。こういう演奏していて楽しくて楽しくてしょうがないというような指揮者はCDよりも実演がいい。来年は佐渡の演奏はなんとか聴きに行くことにしよう。
 私の大好きなソプラノ歌手、バーバラ・ヘンドリックスの「黒人霊歌」(EMI)はどなたもぜひぜひ聴いてほしい。ピアノ伴奏による旧盤もよかったが、今回はモーゼス・ホーガン・シンガーズという合唱団をバックに全曲ア・カペラで歌っていて、それがまたなんとも胸にしみ入るような歌声。
 ロシア出身の女性ピアニスト、イリーナ・メジューエワの「珠玉のピアノ小品集」(デンオン)はその音色の清らかさが心に残る。ドビュッシーの「月の光」なんか心洗われる名演です。

 歴史的演奏では2種類の「皇帝」が出色。
 まずはエミール・ギレリス(ピアノ)、ジョージ・セル指揮ウィーン・フィルの「ベートーヴェン、ピアノ協奏曲第3番、交響曲第5番」(オルフェオ)。ギレリスの力強いピアノ、セルの凝縮された伴奏、そしてウィーン・フィルの音色の美しさ! ライブ録音ながら音質も良好。こんな名演奏が埋もれていたなんて、信じられない。
 もう1枚はクリフォード・カーゾン(ピアノ)、ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響の「ベートーヴェン、ピアノ協奏曲第4番、ピアノ協奏曲第5番『皇帝』」(audite)。こちらはカーゾンの端正なピアノとクーベリックののびやかな伴奏のとけあいが聴きもの。どちらも名演だが、私はギレリスの方が好き。ベートーヴェンはこう弾いてほしいという大きさがある。併録の「運命」がこれまたすごい気のこもった名演なのである。

 というわけで、なんか片寄った聴き方しかしてないのでこんなベストになったけど、今年もとてもすてきなCDにめぐりあうことができたという感じですね。実は旧譜の再発売でもかなり収穫があったんだけれど。

(1998年12月25日記)


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