鼻唄クラシック


シルヴェストリのN響ライヴ

 1960年代から1970年代にかけて活躍したルーマニア出身のコンスタンティン・シルヴェストリという非常に個性的な演奏をする指揮者がおりまして、英EMIに「幻想交響曲」などの録音を残しております。私、この指揮者の演奏が大好きで、単品で購入したCDとかぶるのを承知で何年か前に発売された全録音のボックスセットを買うたくらい。
 で、最近、1967年に来日してNHK交響楽団を指揮したライヴ録音がCD化されているのを知り、買いそろえております。残念ながらモノラルで録音状態もあまりようないんやけれど、妙に生々しい音質。スタジオ録音の残っているドヴォルザーク「交響曲第9番 新世界より」やベルリオーズ「幻想交響曲」などをはじめとして、ベートーヴェン「交響曲第5番 運命」なんてあまりレパートリーになかったんやないかと思われる曲もある。
 ようこんな録音を発掘してきたもんですなあ。天下のN響の管楽器がぶかぶかと困ったような音を出していたり、「幻想交響曲」では妙にティンパニーやシンバルを強打させてど派手に締めたりといやもう個性的というか他の指揮者には真似できんようなノリの演奏ですわ。聴きものはグリンカ「ルスランとリュドミラ 序曲」で、これはムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルのフルスピードで演奏した鬼気迫る名演が残されていて、たいていの指揮者はその解釈に準じた演奏をする。シルヴェストリは違うのですなあ。なんでこんなに遅いねんというテンポで振りはじめ、全体に一音一音をゆったりと聴かせる。で、そういう演奏家と思わせておいて、最後の最後でいきなりアッチェラレンドをかけて一気に突っ走る。珍演といえば珍演であるけれど、これは生で聴きたくなる面白さ。
 最近はNHKの音源提供で名指揮者とN響のライヴ録音が次々とCD化されているけれど、こんな強烈な演奏なら多少音質が悪くとも、モノラルであろうとも大歓迎。この調子でどんどんお宝を発掘していっていただきたいものです。

(2018年2月27日記)


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