21世紀までアイドル


ICHIGOちゃん解散は悲しいぞ

 ICHIGOちゃんが解散した。知らぬ人がいると困るので説明しておくと、大阪朝日放送が「夕焼けニャンニャン」の裏番組として放送した「YOUごはんまだ?」に出てきた若い女の子たちのグループ名である。打倒おニャン子クラブの一番手として「ザ・テレビジョン」なんかに紹介されたこともある。中学生と高校生ばかりの9人組であった。俺はこのICHIGOちゃんに注目しておった。
 口の悪いヤローはICHIGOちゃんやB・C・Gを「おニャン子クラブの物真似」などと吐かしていたようだが、ま、現象的にはそおゆう所なのだけどね。でも違うんですよ、コンセプトは。B・C・Gは名前を美少女倶楽部と言ったようにキレイな子がタイプとして多かった。ICHIGOちゃんはその逆で、たいした子がいなかった。本当に「かわいいなあ」と見惚れてしまうような子がいない(一人だけいたが)グループというのは、凄いと思わんか。ではICHIGOちゃんはなんだ、ただ若い子を並べただけか、と言われると、そおゆうわけでは決してないぞ。おニャン子が当初目指していた「お友だち」「クラブ活動」感覚をズズイと深くまで突っ込んだグループであったのだ。
 しかるに、森雪之丞とゆう愚かな作詞家はおニャン子の「セーラー服を脱がせないで」のコンセプトをただひき写したような下らない歌をICHIGOちゃんにも、B・C・Gにも与えたのである。くやしいぞ! 俺は。
 もう一つは、大阪マスコミがアイドルをどこまで売れるか、という点。「おはよう朝日」というローカル朝番組のアシスタントの辰巳理香とあわせて、大阪弁をしゃべるアイドルは成立しえるか、という一大事に、誰も注目してくれないではないか。同じ読み方でも、辰巳理香は立見里歌より質の高い子なんだぞ、と言ったって、東京マスコミは強いよな。
 「誰もICHIGOがわからない」一枚で、ICHIGOちゃんは消え、東京マスコミに寄っかからない、雑草の強さをアピールすべきだったグループは消えた。
 ICHIGOちゃんについて中森明夫だったらどう言うだろう。俺はそれを聞いてみたい。そういうことである。

初出誌「トーキングヘッズ21号」(1986年7月20日発行)


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