前号を見てやんなったよ。俺のところだけ浮いてやんの。どーせ格好いい事はよう書かんけど。この調子で続けるしかないか。
で、先日、「夜のヒットスタジオデラックス」を見ておると、河合奈保子が山口百恵のナンバーをメドレーで歌っておるわけね。山口百恵が、阿木・宇崎夫婦の作品をたて続けにヒットさせてた頃、もう彼女はアイドルとは言えない存在であったと思うのだけど、奈保子ちゃんが歌っているのを見ると、もう「ロックンロール・ウイドウ」なんて似合わないのなんの。やっぱりあの路線とゆーのは、百恵だけのものなのです。
俺は奈保子がデビューした時から大ファンで今もそうなのだ。「俺はアイドル愛好家だ」と勝手に宣言した時からなるべく特定の歌手のファンにはなるまいと思って今日まで来ているのですが、彼女はもう別格よん。とにかく(特にイメチェンを図る必要もないのだから)彼女は変わらない。十六才でデビューして今は二十三才。今年で六年目のアイドルが、こうも変わらぬ印象でここまで来ているとゆーのはすごいことなのだ。あの松田聖子の変わりようを見よ! 柏原よしえなんて字が漢字に変わったりしてるじゃないか。三原順子は字が平仮名になったし、岩崎良美はアニメ歌手化し、甲斐智恵美はレコードが出なくなった。彼女の同期生はみなこうして変わっているのに、奈保子はそのまま。少しサウンド志向になってるけれど、「スマイルフォーミー」や「ラブレター」なんてデビュー時の歌をコンサートのラストに持ってきても全く違和感ないんだぜ。小泉今日子がコンサートのトリに「私の十六才」を歌ってる所なんて想像できんぜ。
だから、奈保子は天性のアイドル。二十三才になってもあのナハハハ笑いが似合っているのがなによりの証拠さ。だいたいイメージチェンジなんて売れ行きが延びなかったり、落ちてきたりして焦るからするのだ。マンネリでも面白いものはいっぱいあるさ。池波正太郎の梅安がそうだろう。ムリヤリイメチェンなんて効果ないで。
河合奈保子は奈保子ちゃんから今は奈保子さんに呼び方がかわってる。いずれ河合さんと呼ばれるようになるだろうけど、でもそうなっても春風のごとくニコニコ笑ってナハハハと言ってるのさ。天性の、そして究極のアイドルだからやね。
だから、奈保子には、アイドルでは決してなかった百恵の歌なんか似合わねーんだよ。あんな企画を出した「夜デラ」のセンスのなさを俺は再認識しちまったぜ。バーローめ。そういうことだ。
初出誌「トーキングヘッズ22号」(1986年10月20日発行)