ポッキーのCFを見るにつけ、ストナのCFを見るにつけ、俺は心の中で愛を叫んじまうのだよ。
「これだこれだ。これが本来の本田美奈子の姿なんだよお」叫びはこう続く。「秋元康のバカヤロ」と、つぶやきにも似た捨てゼリフなのだ。
実際、デビューした時の美奈子は可愛かったって。デビュー前に大阪ローカル「おはよう朝日です」に出た時、彼女は「大阪ってもっと山の中にあると思ってた」とゆう恐れなど知らぬ発言をし、弩肝を抜いた。俺はそれを見ていて、「ヌ! おーものだ」と確信した。おーものはスットンキョウでなくてはならない。パーとスットンキョウの違いは難しいが、見分けるには勘しかない。山瀬まみは只のパーで※、江戸真樹はスットンキョウである。美奈子はやっぱり、おーものだった。おーものぶりを発揮したのが「Temptation」とゆー曲で、あの曲は確かに名曲であった。ところが、彼女はとんでもない天才に目をつけられた。秋元康である。かのウスラ天才は「彼女は日本のマドンナだ、現代のマリリン・モンローだ」などとタワケたことをぬかし、こともあろうにヘソを出した衣装で息切れするまで踊らせるという暴挙に出た。俺は怒ったね。何も毛唐の歌手や過去の女優に擬することはないのだ。美奈子は美奈子、そのままで天下のとれるおーものなのだ。かのウスラ天才は、作詞家や放送の構成台本書きはうまいが、プロデューサーとしての才能が欠落している。本人がそこに気付いていない所に問題がある。ウスラ天才が妙にしゃしゃりでて来て、美奈子の長所を殺してしまった。まるで山本リンダだのマドンナの物真似だのと言われながら、スクーターの宣伝歌みたいな曲を「ラッタッター」と歌う姿はおーものからは程遠い。うまく売れば全盛時の聖子や明菜を越す存在になれた素材だったのに。
プロダクションは今度の二本のCFで、ウスラ天才の幻想から目覚めなさい。そして、彼女に服をちゃんと着せて、正統派アイドルの本道に戻すのです。今からでも遅くない。おーものにはおーものの道がある。俺はもう美奈子のヘソなど見たかない。ヘソを隠した所に、本来の美奈子の姿があるのである。いくらモデル会社だからといっても、ちゃんとノウハウは掴んでるはずでしょう。ボンドさん。そういうことである。
初出誌「トーキングヘッズ23号」(1987年1月20日発行)
※この勘ははずれていた。山瀬まみはまったくたいした「おーもの」であった。現在ではこの時の不明を恥じている。(1997年11月6日追記)