前巻では天狗どうしの対決などが中心の展開だったが、本書では天狗は室町幕府後期の京都の町を襲う盗賊団の背後にいて操るだけで、伝奇色はうすい。 しかし、応仁の乱のあとの武家と公家の意識の違い、一揆を起こす農民たちの事情、妓楼の女たちの哀楽、商人層の台頭など、歴史小説としての骨格がしっかりしているところを見せてくれている。もともとこの人は歴史小説畑の人なのだよね、実際。
(1997年10月14日読了)