読書感想文


影喰らい 封殺鬼15
霜島ケイ
小学館 キャンバス文庫
1997年11月10日第1刷
定価514円

 陰陽師の使役鬼である志島弓生と戸倉聖の二人が活躍するシリーズもとうとう15巻を数えるに至った。
 今回は外伝で、平安末期と明治初期を舞台にした中編が2本。1000年の齢をもつ鬼が主人公なだけに、どんな時代でも物語を作ることができるのはこのシリーズの強みか。しかし、その分時代考証などをしっかりしなければならないので大変でもある。その点でも常に一定レベルをクリアしているシリーズである。
 1本目「影喰らい」は平安末期の予知能力を持った陰陽師が登場。予知能力はあっても定めを変えることができない、そのジレンマを陰陽師の屈折した言動などから見事に描いている。2本目の「幻戯師」は、明治になり合理的思考が西洋より輸入され、行き場のなくなった妖怪たちの話。たくましい妖怪たちの姿をユーモラスに表現。現代社会への批判的な側面も帯びている。
 両者ともゲストキャラクターの心情など、すぐれた描写力で表現しており、味わい深い物語に仕上げている。シリーズを通して読んでいなくても、本書を単独で読んでも面白い。

(1997年11月2日読了)


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