読書感想文


ロケットガール
野尻抱介著
富士見ファンタジア文庫
1995年3月25日第1刷
1997年4月10日第2刷
定価620円

 ソロモン諸島にある日本政府出資の「ソロモン宇宙協会」という設定は秀逸。なるほど、現地法人という手があったか。これならば女子高生を宇宙飛行士にしなければならない必然性も出てくるというものだ。
 主人公が宇宙飛行士にさせられてしまうまでの展開はいささか強引ではあるが、こうでもしないと女子高生を宇宙飛行士にさせることはできないのかも。なってからの展開はスムーズであり、特に宇宙空間に出てからの描写は読みごたえがある。要は作者はここが書きたかったのだろう。そこにもっていくまでが大変だったのではないか。
 訓練や飛行を通じて主人公の女の子たちの心の動きが微妙に変わっていくのも成長物語という感じがして好感がもてる。
 気になるのは、主人公の父親がアクシオ島で原住民の酋長になっている部分。これ、ひとつまちがうと「差別表現だ!」とかいう抗議が来るかもしれない。ひとつの文化として描写されてはいるが、デフォルメされているので、無理解な人が読むと、少しヤバいのではないかな。

(1997年11月13日読了)


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