人間が死ぬときに脳から電気フィールドが抜け出ていく。これはいわゆる「魂」ではないか。ということで、「魂」を科学的に解明する話かと思ったら、それが違う。
「魂」を科学的に解明するために主人公の脳内データをコンピュータに転写し、どのような思考を持つのかをシミュレートする。3つの人格を作り、一つは「永遠の生を得た自分」、いま一つは「死後も残っている意識を持った自分」、そして最後は「なにも手を加えないそのままの自分」。なんとそのうちの一人が主人公が憎んでいる人間を殺してしまう。これはSFミステリか、それにしては犯人はわかりやすいではないかと思っていたら、これも違う。
どうやら人間の意識というものを様々な方向から解明していく話らしいが、確信は持てない。というのも、作者は前述したような要素をどんどんと盛り込み、一級品のエンタインメントにしたてているからだ。
ただ、「さよならダイノサウルス」よりも結末の意外性とか種明かししたときの衝撃とかが弱い。でっかいホラ話であることにはちがいないのだが。
ともかく楽しませてもらったことは確かである。この作家、クライトンみたいな存在になっていくのではないだろうか。
(1997年11月18日読了)