読書感想文


     とこ
光耀、常しなへ 夢天幻想譚5
冴木忍著
角川スニーカー文庫
1997年11月1日第1刷
定価460円

 「夢天幻想譚」完結編。中華風異世界ファンタジーであるが、ここに至ってSF的展開を見せる。
 両性具有の少年(?)ハルギは天華族という異世界のエリートでありながら、人間の世界で育てられる。彼を天界に戻すために迦陵頻伽のリョウが地上に現れ、彼の周辺の人物たちと争い、国を滅ぼし尽くす激しい戦いとなる。
 ぼくが驚いたのは、そこでいったん主要な登場人物があらかた死んでしまうことだ。ハルギと義兄のエンホァンの二人は最後まで生き残るがあとはみんな滅びてしまう。壮絶な物語である。
 ハルギとエンホァンは紆余曲折の末、創造の神オエセルと破壊の神ナラカより後継者として指名され、それまでの全ての世界を消し新たな世界を作る運命を担わされることになる。ここらへんの描写は手塚治虫「火の鳥・未来編」を彷佛とさせる。
 天華族の設定とか、神の位置付けとか、もう少し説明してくれないと分かりにくいというか、彼らがどこに立っているのか見えにくいという難点もあるのだけれど、設定も展開もこちらの予想をこえるスケールで話は進み、なかなかどうして一筋縄ではいかない物語であった。力作と言っていいだろう。
 好みを分かつ部分もあるだろうが、一読をすすめたい。
 でも、これは異世界ファンタジーなのか伝奇アクションなのか。三村美衣の領分だろうな。

(1997年11月22日読了)


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