読書感想文


東の太陽、西の鷲 3
中里融司著
学習研究社 歴史群像新書
1997年10月4日第1刷
定価760円

 明治初期、大村益次郎でなく山県有朋が死んでいたら、日本陸軍の体質はどう変わっていたか。その着眼点はいい。しかし、その効果がドラスティックに出ているとは言い難い。
 日独伊に加えてソ連が加わった4国同盟のもとで、イギリスは本土を失陥しオーストラリアに政府は逃れている。アメリカは大西洋と大平洋の2面作戦をとり、なにがなんでも日本から攻め込んだという形をとりたくて満州戦線で日本軍の奇襲をでっちあげ、日米開戦、そして大平洋海戦と話は進む。
 器用な作家だけに、海戦の様子などなかなか迫力のあるものになっている。先見の明のある参謀や司令官が陸海軍を動かしていたら……というシミュレーションも手堅くまとめてはいる。しかし、大村益次郎という人物は、それほど戦略眼のあった人物であったろうか。戦術の天才という認識はあるのだが。その大村のたてた長期戦略に基づいてその後継者たちが活躍するという設定にはあまり感心しない。むしろ大久保利通あたりを長生きさせるとかいう方が私には説得力を持つ。他の人にはどうだか知らないが。

(1997年11月22日読了)


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