スターリンの陰謀で、世界各国の要人が暗殺されていく。それは自らの手を汚さず、他国に送り込んだスパイが首脳陣や軍部を動かして殺していくという巧妙な方法で。そんなにうまくいくわけはないと思うのだが、ま、そこはお話ということで。
山本五十六の死にもスターリンの謀略が絡んでいた。そうとは知らず、山本の仇をマッカーサーと見定めた山本の弟子(?)たちがマッカーサー暗殺を計画する。実はそれもスターリンのシナリオ通りの動きなのだ。そんなにうまくいくわけはないと思うのだが、ま、そこはお話ということで。
これは架空戦記として読むよりも国際軍事謀略サスペンスとして読む方が楽しめるのだろう。
ところで、戦時中の話なのに登場人物の一人が「東大工学部」を卒業していたり(帝国大学じゃないのか?)、友だちに「カッコいい」と呼びかける男がいたり(それは戦後石原裕次郎が流行らせた新語じゃなかったっけ?)といったぐあいに、兵器や武器の描写の細かさとは対照的に時代考証がいい加減なところがいくつか見られた。架空戦記によくあるバランスの悪さ、と言えばいいのか。そういう表現が作品からリアリティを失わせるということを書き手は忘れないでほしい。
(1997年12月2日読了)