読書感想文


時空の覇王 2 清洲密謀行
戦国放浪者信長NOBUNAGA
近衛龍春著
KKベストセラーズ ワニ・ノベルス
1997年10月15日第1刷
定価790円

 前巻では違法航時者が信長を本能寺から連れ出した後、えんえんとその後の歴史を信長に見せるというだけで1冊すましてしまったが、本巻ではやっと信長が戦国時代に戻り歴史が大きく変わっていく。
 本書の面白いところは違法航時者が「信長を生かしたらどうなるか」を楽しむだけの傍観者であること。愉快犯による歴史改変というのは、これまでにありそうでなかった設定である。歴史の細かいところをいじるだけで楽しむ架空戦記作家への皮肉というとうがちすぎだろうか。
 これはタイム・パトロールと違法航時者の対決という側面も持っている。未来の政府とタイム・パトロールたちは違法航時者による改変の結果東京の景色がどんどん変化していき慌てて歴史に介入しようとする。こういった道具だてやアイデアはSFなのだが、読んでいてSFとしての面白さは感じられない。テイストが違うとでもいうのだろうか。真新しいことは何もしていないからなのか。
 ともかく改変されつつある歴史がもう少し進行してみないと評価は下せないわけだが。

(1997年12月5日読了)


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