幕末、勝海舟が薩長にとらわれずに人を集めた海兵隊があったらその後の戦史はどうなったかというシミュレーション。本書では幕末から義和団事件という長いスパンの歴史を描く。
第二次世界大戦ものは行き詰まっているだけにこれだけ長いスパンで歴史を改変するものは今後も増えていくであろう。
綿密な考証、正確さを期した記述など、シミュレーションとしては優れている。しかし、なんだか小説というよりも歴史読み物を読んでいる感じがする。いわゆる「小説」らしくないのだ。歴史の進行をひたすら追いかけていて、全編を通した「主人公」は海兵隊という存在のみ。
確かに、戦闘シーンの盛り上げもあり、謎の人物の意外な正体もありと劇的な材料は揃っているのだ。それなのに演出しようとしていないかのような文章であり、構成である。だから、どんな劇的な材料もインパクトを与えてくれない。もったいないなあ。
もっとも、架空戦記マニアにはこういった作品の方が喜ばれるのかもしれないが。
(1997年12月9日読了)