読書感想文


半妖の電夢国
電影戦線 1
流星香著
講談社X文庫 ホワイトハート
1997年11月5日第1刷
定価530円

 ヴァーチャル・リアリティの最新コンピュータ・ゲームソフトのモニターに選ばれた主人公、由利静馬がゲーム世界に入り、冒険をするという話。要は異世界に入り込んでも、時間がくればゲームは中断され、現実に戻れるということだ。これであっちの世界とこっちの世界との往復がやりやすくなった。もう少し現実とゲーム世界が入り交じったりしたら面白いだろうが、この設定じゃ無理か。
 しかし、いくらコンピュータの技術が進んでも、家庭用ゲームソフト(ネットにつながってはいるが)でその中に住む人物(仮想の人格を持つ)が、これほど自然に主人公やその他のプレイヤーたちと会話したりできるだろうか。プログラミングの限界を超えているぞ。これでは「コンピューターは何でもできる魔法の箱」世代のおっちゃんたちと変わらんぞ。
 ストーリーは、ヤングアダルト伝奇アクションの定番で、阿倍晴明が魔を封じた京都で主人公たちが鬼と戦うというもの。次巻への期待をつなぐところとしては、ゲーム世界では自分の好きな設定のキャラクターになっているために、現実では顔見知りなのにゲームの中ではお互いに正体がわからないという点。現実世界に戻って正体がわかった時、どのような反応を主人公が示すのかといったところを楽しみに待とう。

(1997年12月10日読了)


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