小錦の引退に便乗してでっち上げられた本ではない。タイミングが引退と重なったため偶然にもタイムリーな企画となったようである。
著者は小錦を通じて日本の閉鎖性、相撲協会の問題点などを掘り起こしていく。その意図はよくわかるし共感もするが、多分に著者の思い入れ過多な部分が説得力を欠く記述につながっているきらいがないでもない。
小錦の頭脳の明晰さ、力士としての立派さは掲載されたインタビューで非常によくわかる。小錦が相撲をこよなく愛し、また、品格のある力士であったことを記録しているというだけでも価値のある一冊である。
(1997年12月11日読了)