ネタバレになるかもしれないのでまずはお断り。
「神」を創りだす物語はこれまでも多く書かれてきたが、本書のとらえる「神」の概念はこれまでのものとはいくぶん概念を異にしている。ここで語られる「神」は超自然的なものではなく、人間が進化をするために脳の中で創りだした概念なのだ。という話だと思ってたのに。いよいよクライマックスで、巫女、鏡子が「お光様」を呼び出し、上巻冒頭で示されたエピソードである「UFO召還」のTV中継へとやってきて、唐突に様相は変わる。
崩壊する「ブレインテック」の中で主人公孝岡が得たそれまでにない知覚にしろ、人工的に創りだされた「神」と戦う(?)ために去っていくチンパンジーのハナにしろ、それまで小説の展開とともに解きあかされてきた謎を解決するわけでなく、なにかオカルトめいた流れにのっかってすーっとラストに向かって終息してしまうのだ。謎の鍵を握る女性も創りだされた「神」も結局どうなってしまったのかあいまいなまま。思わせぶりに話を進めておいて、後は読者の想像に任せるということなのだろうか。
これはミステリーではないのだから、全てを解決させる必要はないのかもしれない。それでも、ここまで謎を盛り上げておいて、登場人物たちだけが読者を置き去りにして納得してしまうような、はぐらかされたような。読後の充足感が私には得られなかった。
なお、エピローグは完全に蛇足。SFにオカルトを継ぎ木したような読後感を与えるだけで違和感を増すだけのような感じがした。
ええい、なんかうまく言えないが、スッキリしないぞ。
(1997年12月17日読了)