読書感想文


同情するなら笑ろうてくれ
車椅子からもう一度舞台復帰を目指して
木村進著
光文社
1997年12月25日第1刷
定価1048円

 木村進といえば、「吉本新喜劇」の若き座長として間寛平ちゃんとコンビで一斉を風靡した名優である。とにかく関西の人間で進ちゃんの「イッヒッヒッヒ」を知らぬものはいなかった。10年前までは。進ちゃんは九州の人気喜劇役者、二代目博多淡海の息子で、三代目を襲名したが、その直後に脳内出血で倒れ左半身不随となり長い間リハビリテーションに励んできたのだ。もちろん、舞台に再び立つ日を夢見て。
 再婚した奥さん(文中では名前を伏せているが、元日活ポルノ女優の風間舞子)には逃げられ、残された娘、優ちゃんとお母さんの3人で生きてきたその間の思い出が本書では語られている。
 人気の無くなった「新喜劇」への吉本興業の仕打ちなど、これまでは吉本側からしか語られなかった裏話もあり、また、若き日の間寛平との友情など、思い付くままに語る進ちゃん。そして、間に優ちゃんやお母さんのコメントをはさんで立体的に彼の再起をとらえようとした構成など、分量としてはさほどでもなくすぐに読める本だが、内容は胸を打つ。
 芸人が動けなくなった時、そして世間から忘れられてしまった時、それは死んだも同然なのだ。それでも諦めなかった木村進という本物の芸人の凄さを思い知る。それは同情ではなく、芸人への畏敬の念である。
 もしあなたが木村進のファンだったなら、御一読をお勧めする。

(1997年12月21日読了)


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