西原理恵子の傍若無人なマンガは他の者に真似できない迫力がある。
本書はそのサイバラとカメラマン、勝谷誠彦の2人を中心とした5人のメンバーがアマゾンで魚釣りをするというただそれだけのものなのだが、サイバラは情け容赦なく同行のスタッフをボロカスに描き、ブラジルで出会った種々様々なのものを罵詈雑言とともにこれでもかこれでもかとなぎはらう。ところが、この自分の感情に全くもって素直なマンガではそれらが人間やブラジルの本質を虚飾のないままにあばきたてているのだ。
そしてこれだけボロクソに描きながら、彼女はスタッフの一人と結婚までしてしまったという。
何者をも恐れずただただ感情のおもむくままに自分もまわりの人間もクズのように描くことのできるサイバラ。これは天才的な才能である。「ただの子ども。何も考えてない」と彼女を酷評する人もいないではないが、そのような感性を持ち続けることは凡人には不可能なのではないだろうか。
(1997年12月23日読了)