明治の名将、秋山真之から教えを受けた主人公、矢垣参謀(もちろん架空の人物)が、まるで「三国志演義」の孔明のごとく先を読んで手を打ち、日米を早期講和に持ち込むための戦いを続けるというシリーズ。特撮映画を英国首脳に見せて日本が大量の戦力を持っているかのように思わせ、英国を中立化させるなどとんでもないアイデアを使う。私は苦笑してしまったのだが、架空戦記ファンはどうとらえているのだろうね、こういうアイデアは。
作者は、秋山真之が太平洋戦争時にいたらどう戦うかという思いを矢垣に託している。それは、日本が理想的に太平洋戦争を戦い抜いていたらという思いでもあるようだ。
その上で、私にはやはり不満が残る。いくらなんでも矢垣はうまくやりすぎるのである。それこそ前述したように「三国志演義」の孔明みたいに「失敗するのも計算のうち」というように。どこかにほころびのあるのが人間。矢垣は他の軍人から憎まれているのに山本五十六の庇護で失脚もしない。それではシミュレーションとしては面白いかもしれないが、小説としては全く面白くないのである。
(1997年12月27日読了)