花に自分の思いを投影する者の心にある「花芯」。人の心の弱さにつけこみ、永世と常世の二人の姫は「花芯」を抜き取りその者を自分たちのアクセサリーのようにしようとする。それを防ごうとする謎の美青年、青葉時実。彼は「花芯」を抜き取られようとしている女性たち自身の力で永世と常世を拒否するように働きかけていく。
能などの伝統芸能や古典への深い造詣をもとに、人の心に潜む弱さや虚栄心を見事に描き、そこにつけこむ甘い誘惑の恐ろしさを余す所なく表現した連作集である。
花守りである時実やその主人である日照間も、絶対的な力を持つ存在ではない。むしろ、彼らもまた悩み、惑いながら、花に思いを託した女性たちを救うのである。これこそ女性作家にしか描き得ない世界ではなかろうか。
超大作、ではない。しかし、鳴り物入りの大作よりもこの小品の数々の方がどれだけ人の心に染み入るようななにかを残してくれることか。
(1997年12月28日読了)