わーい、マッドサイエンティストだぁ。それだけで喜んでどうする。息子に超能力を増幅させる薬を与え続けているぞ。いったいどんな成分なのかな。切れると禁断症状をおこして死んでしまうぞ。この博士にしか作れないんだって。逆らう息子に薬をちらつかせていたぶっているぞ。なんか呪術師が作る秘薬みたいだ。
主人公の美少年は「能力者」なのだ。その博士は彼を捕まえて薬を投与し、自分の手下にしようとする。わーい、典型的悪役だ。
主人公のおじいさんは「能力者」を管理する財団の理事長だ。この財団の業務はそれ以外には書いていないぞ。財団法人の認可をもらうのにどう申告したんだろう。
ついおちゃらけた書き方をしてしまったが、二人の美少年エスパーの愛憎を中心に描くための道具立てとして、これではあまりにも安易ではないかと思うのだ。超能力を発現させる薬を考えるのはいいが、何の裏づけもなく出されたのでは、単なる御都合主義でしかない。「財団」にしても然り。この手の正体不明な組織というのはヤングアダルトにはありがちではあるが。
だから、登場人物たちが自分の過去や現在について思い悩んでいても「何を悩んでるの」としらけてしまいさえするのだ。
(1997年12月29日読了)