舞台は中国の架空の国、旦の都、慶園。主人公は貘龍という幻獣を操る男、湟。それに若き風水師の隆慈、義賊呉衛門など多彩なキャラクターがからむ。2年ぶりの続刊ということで、話を思い出すのに難儀した。
敵は影にとりつき相手のパワーを吸い取る妖術を使う三兄弟。彼らは自分たちを都から追い出した者への復讐のため、民衆を煽動し、宮廷を破壊しようと企む。その手口の巧妙さ、キャラクターの有機的なつながり、そして主人公たちが強大な敵によってもたらされた窮地を脱出する方法など、しっかりとした構成である。
それだけに架空の国でなく、実在の中国の国を舞台にしてほしかった。そうすることにより時代背景や風俗などがよりはっきりし、物語に奥行きが生まれると思うのである。敵にはさらに黒幕がいるようだが、その黒幕の正体も時代背景をうまく使えば必然性のある実感できる存在として感じられるだろうに。
とはいえ、伝奇アクションとしてのできはなかなかのもの。今後の展開に期待するとともに、刊行ペースをもう少しあげてほしいと思う。
注文をもうひとつ。登場人物のセリフに「リンクする」などの現代日本で使われている外来語がよくまじる。これはいくら架空とはいえ中世中国らしき国を舞台にしているだけに、雰囲気を壊すことおびただしい。もう少し言葉に気を遣ってほしいものだ。
(1997年12月31日読了)