蠱術にとらわれた少女にとりついた病を癒すため、渡り医師が主人公の顔回の力と医術の神・祝融の力を借りる。顔回は祝融とともに冥府に行き、巫術使いの妖女・子蓉と手に汗握る戦いが始まる。この戦いは「話」と呼ばれる言葉のやりとりによるもので、相手の心の弱味をついて言い負かすことが勝利となる。言い負かされたら顔回は死んでしまう。
一方、医師は少女の体内から現れた病の本体である少女の分身と命を賭けた戦いを始める。
「話」の戦いが延々と続き、本巻は少々くどい構成ではあるが、「話」の駆け引きの巧妙さなど、読みごたえ十分。ここらへんは作者の力量を十二分に発揮してるといえる。
ところで、舞台背景の解説や術の説明など、作者はますます司馬遼太郎に近づいてきたのではないか。卓越した知識をその場の雰囲気を壊さずに語り、すっと物語に戻るところなど、司馬遼そのままである。そういう意味では、司馬遼太郎が苦手な人にはかったるいかもしれない。
(1998年1月2日読了)