読書感想文


覇者の戦塵1942 急進真珠湾の蹉跌
谷甲州著
中央公論社 C・NOVELS
1997年10月25日第1刷
定価800円

 シリーズ11冊目。とうとう真珠湾攻撃が始まった。日米開戦を回避せんとしていたこのシリーズも、歴史の流れには抗えなかった。とはいえ、ここまで積み重ねてきた10冊にわたる改変の重みが違う。満州での油田発見、オホーツクでの海戦などを経て国力をたくわえている日本に対し、アメリカは明らかに脅威を感じており、敵から挑発する形で開戦にいたるのである。そのため、真珠湾攻撃も完全な奇襲ではなく、相手のすきをついてかろうじて戦果をあげたという程度に留まり、ミッドウェイでの戦闘にすぐにはいることになる。
 あとがきで作者は「歴史を変えることがこんなに面白いこととは思わなかった」というような発言をしているが、ただ一人で面白がっているだけではなく、読者を納得させている。つまり、歴史を改変する面白さを読者と共有しているといっていい。
 角川書店から中央公論社に版元が移ってからは順調なペースで刊行されていることだし、続刊でこの戦いをどのように終息させていくのか、興味は尽きない。

(1998年1月4日読了)


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