主人公は現時代の作家。彼はナチス時代のドイツにタイムスリップして、自分の歴史に関する知識を使い歴史を改変しようとする。ナチスドイツ編は本書で7冊目。
ヒトラーの信頼を勝ち得た主人公に対して脅威を覚えたヒムラーたちは、ヒトラーを監禁し異母兄アロイス・ヒトラーを替え玉とし自分たちの傀儡とする。作者は史実でヒトラーが政治的にも軍事的にも天才ぶりを発揮していたのに途中から凡庸になってしまったと指摘しているが、このシリーズはそれを小説として描いたものだといえる。本巻では主人公が本物のヒトラーを奪還しようと、同志とともにヒトラーの別荘に侵入する。迎え撃つのはSSの精鋭たちとゲシュタポである。
展開は細かいところまで目の行き届いたものであり、読みごたえもある。戦国時代編では主人公に敵対する人物の力が強く、結局歴史を覆すことができなかったが、ナチスドイツ編ではすでに大きく歴史は改変されている。はたして作者は読者をどのような世界に導こうとしているのか。これから先の展開に注目したい。
ただ、書き込みが細かくなってきた分だけ話の進行も遅くなり、私としてはいささかしんどくなってきている。もう少し展開をスピーディにしてほしいものです。
(1998年1月6日読了)