体内に神を宿した殺人鬼、八千草飛鳥。本巻では古都奈良で”去れずの森”を守る謎の宮司との対決。暴力団をも手足のように操る宮司、大井出才蔵の語る”神”についての考え方は、荒ぶる神、禍つ神という古神道の考え方をひくものである。神は恐れの対象なのである。しかし、飛鳥の体内に宿った”神”は、殺人を繰り返そうとする飛鳥の本能をセーブする。はたして飛鳥の食らった”神”は荒ぶる神か慈悲の神か。
ここでの飛鳥の葛藤はなかなか面白い。というのも、これまで菊地伝奇バイオレンスの主人公にはそのような葛藤を演じる者はあまりいなかったように思うからだ。彼が助けた親子、そして彼の体内の”神”に純粋なる信仰を持つ女性、麗子は、彼とともに”去れずの森”へ迷い込む。この森にも”神”は住み、一度入った者は二度と出られないのだ。
いよいよ次巻から”去れずの森”の”神”と飛鳥の体内の”神”との戦いが始まるのだ。次巻以降の展開に期待したい。
作者にとっての”神”とはなにか。その答を見い出すことかできるであろう。
(1998年1月9日読了)