新選組の沖田総司に強い思い入れのあるという作者が、彼を主人公に新しいシリーズを開始した。
沖田総司は、ある異世界でその世界を滅ぼすほどの力を秘めた存在だったらしいが、本人はその世界のことについては全くわからず、夢と現実の境界線であると漠然と考えている。彼は実世界でもテレポーテーション能力を持つ超人であり、道場では無意識のうちに必殺の剣をふるう天才剣士である。試合に呼ばれていった先の城で、彼が出会った男は、異世界で彼を殺そうとした男に瓜二つ。沖田総司と異世界からの魔の手との戦いが始まる。
私はこの作者の登場人物への過剰なまでの思い入れについていけない時がある。文章もそうで、修飾過多とも思える表現が続き、しんどくなってしまうのだ。ストーリーテラーとしてはすぐれた作家だと思うのだが、この過剰さはなんとかならんものだろうか。
異世界のシーンはえらく古臭いジュヴナイルSFの舞台みたいで、沖田総司に対する書き込みとは対照的だ。ここらへんのアンバランスな部分は作品のこれからの展開にも関わってくる大事なところだけに、気になる。
(1998年1月10日読了)