シリーズ第5弾。
退位した孝謙天皇が、かつての恋人藤原仲麻呂(恵美押勝)に裏切られ、その怨みから生き霊となり、恵美押勝やその周辺を襲いはじめる。神語部は正史にあらわれない陰の歴史を記録しておくのが勤めであるが、真言の呪法を用いて都の安寧を守る役目もする。女帝の生き霊から押勝を守るのである。
女帝のもとに現れた僧、道鏡は女帝をけしかけ押勝との対決が始まる。押勝は新羅出兵に名を借りて兵を集め、女帝と道鏡を討とうとする。神語部たちは今度は女帝を守る立場をとり、押勝は追いつめられていく。
歴史に残る「藤原仲麻呂の乱(恵美押勝の乱)」をベースに、呪術の飛び交う派手な展開。あいかわらず誰もが「きえーっ」と叫びながら万能ともいえる力を発揮する。まあ、”肩の凝らない読み物”と作者があとがきで書いているくらいだからそれでもいいのだろうが、このシリーズはどの巻の展開もそれほどかわりばえせず、史実の進行に色をつけたという程度のものにしかなっていないのが残念だ。
神語部は時代が変わるのに応じて代替わりをしているわけだが、どの話でも同じような個性である。まあ、意識してそうしているのだろうけれど、時代によって神語部たちの個性の違いをもっと書き込んだ方が面白くなるように思うのだけれどなあ。
(1998年1月15日読了)