銀河系内の3つの勢力…太陽帝国、地球連合、ガイアード連邦…は、100年間に渡り相互不干渉の協定を守ってきたが、太陽帝国の皇位継承争いをひきがねとして、大きな規模の戦争が始まった。太陽帝国の皇太子は、ID機能を備えた玉璽を持って亡命。傭兵レオンの助けで皇位回復を目指す。
各勢力の政治体制や文化背景の違いなどのしっかりした設定を基盤に、壮大な物語が紡ぎ出されていこうとしている。登場人物それぞれの立場や考え方などもそういった設定があって、その上で自然に形作られている。したがって、行動などに無理がなく、登場人物が自然に動き、物語の進行と有機的につながっているのだ。
長い間、「シム・シビライズ」として文明史を視野におさめた架空戦記を書き綴ってきた作者が、そうやって培ってきた歴史の組み立て方を十分に生かし、興味深い”宇宙三国志”を開始したということになる。長丁場になりそうだが、このシリーズを通じて国家や政治というものの本質を問い直していくことが期待できる。楽しみなシリーズの開幕である。
(1998年1月15日読了)