竜堂四兄弟が、文化事業としての国際演劇祭を行う地方の小都市にやってきて、謎の「銀月王」と対決する。この「銀月王」は主催者を操って、演劇祭の看板で人を集め、一気に全てを食らおうというやつだ。
例によって時事批判ネタも快調。「自賛史観研究会」が何を指しているかはわかるね。地方政治というものは、新幹線の止まる駅を作れるかどうかによって決まったりするというくだりもある。
本書は外伝とはいえ、サイド・ストーリーですらない異色作。「創竜伝」の設定を生かして別の話を書いたというべきか。例えば四兄弟の天敵、小早川奈津子嬢ももちろん出てくるのだが、それは学校の教師としてであり、しかも彼らとは初対面だったりする。松永良彦くんをはじめとする主要人物は一切顔を出さない。
このシリーズは作者にとっては本流の作品とはいえないのに代表作みたいに扱われる不幸な作品だと思うが、遊び心を満たすために書かれているようなシリーズだからこそ、このような”遊び”をしても許されるのかもしれない。賛否は分かれることだろうが、私は別にかまわないと思う。シリーズそのものが壮大な”遊び”なのだから。
(1998年1月23日読了)