なんといえばいいのか、壮大なホラ話である。
極めて不親切に物語は始まる。鳥玄坊先生一派の若手、青山ヒロシ君の一人称で、登場人物の関係や舞台背景など全て読者が了解していることであるかのように話は進む。もっとも、事実関係などヒロシ君も実はよくわかっていないということになっていて、彼が全貌を知ることにより、読者も物語を理解していくという仕掛けになっているのだ。
突如大平洋に出現した謎の恐竜、ピラミッドの地下や始皇帝の墳墓から出土した日本語で書かれた謎の文書など、全ての不可思議なできごとから世界の根源の謎を解明していくのが鳥玄坊先生とその一派の役割である。
その鳥玄坊先生だが、恐るべき頭脳と財力、裏の権力の持ち主らしい。そんな奴おらへんで、というぐらいのスーパーマンなのだ。それには理由があり、根源の謎を解明する過程で先生の正体も明らかになるという構成になっている。
読み始めはとっつきにくいが、読み進むうちにそのあまりの大ボラにあきれながらもなぜか話に引き込まれてしまう。この世に存在しない歴史書ォまるで実際にあるかのように引用してしまうのだよ。それを「そんな文書はないぞ」と怒ってしまう人にはお勧めしない。
小説としてはギクシャクした展開が未完成さを感じさせ、またやたらペダンティックなところが鼻についたりしないわけではないが、その奇想ぶりに免じてあげよう。作者の小説初挑戦でもあることだし。
(1998年1月25日読了)