大坂夏の陣で豊臣秀頼親子を救出し、千早赤坂城に立て籠った真田幸村。徳川家康の首を狙うが叔父にあたる忍者に阻まれる霧隠才蔵。この二人を軸にして豊臣秀頼の天下取りへの道を描く架空戦記である。
さすがに話の運びもうまいし、伏線も十分に生かされよくまとまっているとは思うのだ。でも、豊臣秀頼が天下を取りました、でおしまいというのはないんじゃないの。豊臣秀頼が関白となり天下を治めるのと徳川幕府が続くのとではどれだけ違うことなのか、その意義の片端だけでも書いてあればずいぶんと印象が違うのに。
それに、典厩五郎がなぜ架空戦記を書いたのか、それがよくわからない。よほど真田幸村が好きだったのだろうか。架空戦記を書いてみたかったのだろうか。親本は1993年に光栄から発行されている。そして、その後、作者は架空戦記を書き続けているわけでもない。こういう作品にこそあとがきをつけてほしいものである。
(1998年1月28日読了)