シリーズ第4弾。烈堂の師匠、荒木又右衛門の息子が出奔した。父をしのげないのは刀のせいであると思い込み、名刀を求めて旅に出たのである。師匠に息子を探すのを頼まれた烈堂は各地で名刀にまつわる事件に巻き込まれ、解決しながら師匠の息子に近づいていく。名刀にまつわる短編を連ね、それがひとつの長篇となる構成がなかなかうまい。
主人公は肉身の愛情に恵まれず無頼ではあるが、それだけに師弟関係を大切にしている。その心情の描写など細かいところにも目配りされている。
柳生烈堂は「子連れ狼」での拝一刀の敵役としてしか知られていないが、そういった人物を物語の主人公に据えるあたりが、時代小説作家としての作者のセンスのよさである。もっと話題になっていいシリーズだと思う。
(1998年1月31日読了)