ソマリアと紅海を舞台に潜水戦艦日本武尊が縦横無尽の活躍をする。国際政治論ばかり説いていた本シリーズも、ようやく活劇シーンを中心とした展開に戻った。とはいえ、やることなすことうまくいき、なんだか読んでいてもカタルシスがない。無敵の超戦艦という設定、少しやりすぎである。
作者はあとがきで”荒唐無稽”の面白さを熱弁しているが、荒唐無稽の面白さと御都合主義のつまらなさは紙一重ではないのか。どうもこのシリーズ、派手に展開するのはいいが都合のいいところばかり目立つような気がするのだ。大木こだまではないが、「そんな奴おらへんで」と突っ込みたくなってくる。
真の荒唐無稽は「ムチャクチャな!」と思いながらも突っ込みようがないものを指すのではないだろうか。もう好き放題書いてあとがきで「これは荒唐無稽だから何をしてもいいのだ」という論調で開き直られても、ねえ。ここまでやると霧島那智と変らんぞ。
(1998年1月31日読了)