山本五十六が暗殺され、真珠湾攻撃は計画すらない。マレー沖海戦では、プリンス・オブ・ウェールズは駆逐艦の魚雷により沈んだ。この結果、連合国側には航空戦の重要性はわからず、艦隊決戦が主流のままとなる。日本はこれに対し航空機による雷撃を敢行、米国大平洋艦隊は壊滅状態に…。というのがおおまかなあらすじ。
本書の場合、これらは舞台背景に過ぎず、山本五十六と同郷の若者たちの青春模様が小説の軸となっている。こういった構成はいかにも秋月達郎が好みそうなところだ。しかし、「原作」とクレジットされているところから、原案は秋月氏が出したものの実際に執筆したのは矢矧零士という新人作家である。文章はこなれていないし、展開のさせ方も強引であったりする。新人だから仕方ないとはいえ、そんなことなら秋月氏の手になるものを読みたいところだ。どういう事情があって「原作」というような事態になったのか知りたい。こういうケースにこそ「あとがき」は必要なのではないだろうか。
(1998年2月5日読了)