1999年7の月、天より降ってきた恐怖の大王は、女子高生が唱えたおまじないにより力を半減させられ、サドの女王様スタイルで間抜けなことばかりする変態と化してしまったのである。
細かなギャグの積み重ねで一つの小説を作り上げていくという「ユーモア・スケッチ」のスタイルを応用したような作りになっている。作者がそれを意識しているかどうかは知りませんが。ここのギャグには出来のいいものもあるし、積み重ねが効果をもたらしているものもある。しかし、大爆笑にはいたらないのだ。ギャグに説得力がないとでもいうのだろうか。強引に笑わせようとしてしまい、空回りしているというべきか。全体を通じてギャグのつながりが弱いのだ。これだけギャグを投入していながら無駄が多く、もったいない。
「笑いというものは『緊張と緩和』から生まれるのでございます」とは桂枝雀師匠の名言だが、その言葉を借りれば、本書は緩和ばかりで緊張がない。
秀逸なギャグもあるのだ。実にもったいない小説である。
(1998年2月8日読了)