大鑑巨砲主義は時代遅れで、航空主兵が戦法としては有効であるという常識に、作者はあえて異を唱え、「紀伊」「尾張」という二隻の超大形戦艦を創造した。これもまた大鑑巨砲主義の米軍と真っ向から対決させている。
その意気込みは買う。
ただ、一つの戦闘を描写するのにあまりにも多くのカットバックを使って細切れに多方面の視点を使っているため、非常に読み辛いのだ。迫力のある大ホームランもテレビのスロービデオで見せられるとその迫力がのろくさいものに変ってしまう、そんな感じか。せっかく主役格の人物に技術官を起用しているのだから、徹底的にその視点から書いた方がよかったと思う。そうすると見通しもよくなり、またユニークな架空戦記として仕上がると思うのに。
続刊では突如満州に攻めてきたソ連軍に対し、海軍をどう活躍させるのかが焦点となるだろう。作者の手腕が問われるところだ。
(1998年2月15日読了)