この作家はよほど山口多聞という軍人が好きらしく、他にも「彼がもし指揮権をとったら、日本はアメリカに勝利していた」という作品を書いている。
本作は米軍の特攻で真珠湾攻撃の航空艦隊指揮官、南雲忠一が戦死、自動的に山口多聞が指揮権をとることになる。上官命令を無視して勝手に兵を動かした山口は大戦果を挙げ、アメリカ大平洋艦隊は壊滅。またイギリスのセイロン艦隊を叩いて圧勝する。司令官たちは山口の我がままを無条件に許し、止めることができない。何をやっても結果を出せばそれが正義となる凄い世界であり、作者はそれをさも当然のように描いている。
これまでに書かれてきた霧島那智による「山口多聞」ものとほとんど同じものといっていい。新たにこういうものを書く意味を見いだせない。出版社はそれぞれ違うという妙に律儀なことをしているが、版元が変ったからといって読者も変るとは限るまい。それとも、先行の作品が絶版になる時期を見計らって同じようなものを繰り返し書いているのだろうか。どうも理解に苦しむ。
(1998年2月20日読了)