夢の宮シリーズ第9弾(11冊目)。息の長いシリーズになってきた。鸞国という架空の中国にある正妃の住む「夢の宮」を舞台にとり、そこに住む女性たちの姿を時代の順とは関係なく描いてきているシリーズである。そのため、主人公は一冊(上下巻も一冊と数える)ごとに変わる。そのあたりが長続きしている原因かもしれない。ただ、年代を示す手がかりがほとんどないから、”夢の宮年譜”は作りにくい。あえてそうしているのかもしれない。
本巻は急逝した姉の代わりに鸞に輿入れした姫君が、実は初恋の人でもある国王に対して「本当に自分を愛してくれているのか」と煩悶する物語。ミもフタもない書き方になってしまったが、心理描写がうまく、少女の揺れ動く心をきめ細かく描いている。
こういうメロドラマというのは、ほんとは私の趣味ではないのだが、このシリーズだけは許してしまおう。優れた物語というのはそういうものだ。
(1998年2月25日読了)