読書感想文


龍馬の明治 II −内乱平定編−
中津文彦著
光文社 カッパノベルス
1997年12月20日第1刷
定価781円

 中津文彦が書くと歴史改変小説も戦略シミュレーションではなく政治経済主体のものとなるのだった。政略シミュレーションとでも呼ぶべきか。
 前巻では、龍馬の奔走で武力討幕が断念され、平和裏に明治政府が誕生した。本巻では投票により西郷隆盛総理が選出され、政治改革が行われる。
 史実では西南戦争など討幕派の士族が中止となって起こした反乱が、ここでは戊辰戦争が行われなかったという改変により、旧幕臣がひき起こすことになる。その点で矛盾もなく強引さもない。実に読みやすく描かれている。実力のあるベテラン作家が架空戦記を手掛けると、こうも違うものかと感心する。「小説」の面白さとはなにか、それがわかっているということなのだろうか。
 また、本巻で作者は、日本に真の民主主義を根付かせるにはどうすべきであったかというモデルを作ることに腐心しているが、これが官僚中心の政治となってしまい現在に至る史実の批評として機能しているというように感じられた。

(1998年2月28日読了)


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