作者お得意の中国少女活劇。シリーズ3冊めの今回も作者らしさを満喫させてくれる。
女人国”西涼”の4人の王女が、御託宣伺いの旅に出た。その道中に元盗賊、吟遊詩人、王宮の武人が加わり、恋あり冒険あり妖怪ありとにぎやかなこと。
前巻では次女が惚れた男とともに去り、姉妹3人と連れが3人。
女盗賊を頭目とした馬賊が出現、長女をさらってしまう。頭目の出自は、狼の血をひくといわれるちいさな部族。長女は孤独な心を持つその女に友情を感じるようになる。この2人、ほんとは1人の男をめぐる三角関係にあるのだが、それ以上に通じあうものを感じとったのだ。ここらへんの設定は心憎いばかりだ。
残りの5人は洞窟をくぐって一度入ったら出られないという森に迷い込む。この森には女盗賊の部族に伝わる伝説が大いに関わっているのだ。
決してツボをはずさない達者な筆致は健在。とはいえ、多分に職人技で書かれているといった印象がなきにしも非ず。この作者には単なるエンターテインメントだけにはとどまらないプラスアルファが欲しいところだ。痛快冒険恋愛活劇だけの作家ではないのだから。
(1998年3月3日読了)