読書感想文


僕の血を吸わないで
阿智太郎著
メディアワークス 電撃文庫
1998年2月25日第1刷
定価550円

 第4回電撃ゲーム小説大賞銀賞受賞作ということで、多少は期待してたのだけれど…。
 主人公の花丸森写歩朗(はなまる・しんじゃぶろう…このネーミングで嫌な予感がした)が、夜に宿題をしていると、窓から女の子が飛び込んでくる。これがなんと吸血鬼。彼女は吸血鬼を倒そうとする組織に追われている。
 多少陳腐ではあるが森写歩朗と吸血鬼ジルとの淡い恋物語に話を絞ればいいのに、ストーリーは追わぬ展開を見せる。
 森写歩朗の所属する演劇部がオリジナル脚本でコンテストに参加する。主役の女の子を演じるのは誰かというもめ事が起きる。違う二つの話を継ぎ木したかのような構成だ。それなりに二つの話はつながりをもたせてはいる。しかし、無理がある。
 全体にコメディとして書かれているのだが、あまりにもギャグが幼稚すぎて面白くない。作者のあとがきを読むと高校3年の時に書いたものだという。高3か。確かに高校生の男の子がふざけて書いたような話だ。
 散々な書き方をしたけれど、作者よりも出版社に対して言いたい。この作者はまだまだ作家デビューするほどの力量を備えていない。センスはなくはないが、もっともっと力をつけてからデビューさせるべきだろう。この話がこうやって本になったことは本人のためにはならないのではないだろうか。まだまだ若い。そんなに急ぐ必要はない。安易に賞を乱発すべきではないと思う。

(1998年3月14日読了)


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