読書感想文


ニッポンマンガ論
フレデリック・L・ショット著
樋口あや子訳
マール社
1998年3月5日第1刷
定価1400円

 日本マンガ通のアメリカ人による日本マンガ論と、米国における「マンガ」「アニメ」の受け入れられ方などをくわしく記している。
 原題は”Dreamland Japan”。日本が夢のような国だという意味ではない。マンガやアニメなどによって常に夢を見ているような国だ、ぐらいの意味。邦題は「マンガの国ニッポン」あたりが原題を反映したのではないかと思う。「菊とマンガ」とか。
 本書は米国の「マンガ」ファンでない人向けに書かれた案内書という性格を持つ。だから、比較文化論的な要素は割と少ない。あっそうか、だったら「菊とマンガ」だと誤解を生むな。「マンガ」の魅力、「マンガ」の危険性、「マンガ」に対する根強い誤解を正すためのていねいな解説書という感じだ。
 「マンガ」ファンの少年が「どうして僕はアメリカ人なんだろう。日本人に生まれたかった」と言ったという。両親は白人優位主義者なんだそうだが、「マンガ」にのめり込んだ者はそこまでイッてしまうわけだ。
 「マンガ」の米国での受け入れられ方に興味を持った。また、著者の「マンガ」をとらえる幅の広さも驚異的なものである。著者と小野耕世の対談は日米の比較をする上でも一読の価値はあるだろう。
 ところで、版元のマール社といえば美術系の出版社。私も「レタリング辞典」や「やさしいフィニッシュワーク」などで親しみがあった。どうして「マンガ」を特に美術としてとらえているわけでもないこの種の本を出す気になったのでしょうかねえ。

(1998年3月17日読了)


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