ウルトラセブンのモロボシダン役で名を馳せた森次晃嗣の半生記。若くして一つの役で知名度を高めた俳優の奮戦記である。
主役に抜擢された新人俳優のとまどいや、ダンというキャラクターに引きずられながらそれを断ち切ろうとし、30年たってやっと吹っ切れたというところなど、フジ隊員の桜井浩子やアンヌ隊員のひし美ゆり子らの自伝にも共通する悩みであったようだ。
その重石は桜井浩子が一番強く感じていたらしい。ひし美ゆり子はすぐに「プレイガール」に出演したりとかなり割り切っていたようなのだ。森次晃嗣はその中間くらいか。これは時代劇や舞台など新しい活躍の場を多く得ることのできた著者の強みかもしれない。もっとも「ウルトラマンレオ」への出演依頼があった時に自ら「モロボシダンの役にしてほしい」と申し出ているとこらへん、著者のダンへの思い入れみたいなものを感じるのだが。
自伝としては出来事とその感想を並べただけでもうひとつ深みがない本であり、新しい発見もそんなにないのだが、ウルトラシリーズのファンは読んでおきたい一冊と言える。
(1998年3月29日読了)