春から大学生になる青年が主人公。作者は19才とのことだから、等身大の人物を主人公に持ってきたことになる。
父親の自殺にショックを受けた主人公が父のパソコンを立ち上げると、そこには彼の妹と名乗るバーチャル人格がいた。彼は次第にコンピューターの中の少女に恋心を抱くようになる。一方で、その妹は実は彼が産まれた頃に自殺した姉と同じ名を名乗っていることがわかる。主人公は初めて知った姉の存在にショックを受け、その死について真相を探り始める。
正直、読んでいて辛かった。
文体が翻訳調で読みにくいということもあるが、とにかく思いのたけを全て文章にせずにはいられない、その生乾きな若者の心情をまともにぶつけられるのが痛いのだ。姉と主人公の関係とか、コンピューターの中の少女の正体とか、小説としての仕掛けをほどこしているのだが、若者がその若さ故に持つ人間関係や社会関係に対する矛盾へのやり場のない思いに全てはかき消され、それらの仕掛けが死んでしまっている。もっともこの仕掛け自体はスキャンダラスではあってもそれほど凄みはなく、またうまく完結させることができないで破綻してしまっているように思えた。このラストを破綻と見るか作者ならではのオリジナリティと見るかは読み手次第だとは思うが。私が同じ年頃に同人誌に発表した小説に似たところがあり(才気はむろんこの作者の方が上だ。これだけのものを私が書いていたら今ごろは印税生活をしている)、ラストに収拾がつかなくってどうとでもとれる終わり方にしたところまでいっしょだ。だから、私は破綻と見る。
なんか自分が若い頃に自慰をしていた姿を見せられているような気がするのですね。ああ恥ずかしい。こういう、若い作者が思いをストレートにぶつけてくるのって、苦手やねえ。
(1998年4月4日読了)