読書感想文


魔剣士 黒鬼反魂篇
菊地秀行著
新潮社
1998年2月20日第1刷
定価1500円

 本能寺の変で織田信長を倒した明智光秀は、信長に仕えていたヤスケという黒人を逃す。ヤスケこそは死人を蘇らせる術を使う、悪魔を奉じる者だったのである。彼は朱物と名乗る謎の人物のもとへ走る。一方、山人の集団によって目覚めた男、奥月桔梗は反魂の術で蘇った死人を父に持つゾンビと人間のハーフである。彼をめぐって羽柴秀吉、朱物らの見えざる戦いが始まる。
 作者には珍しく、歴史の流れを背景にした正統派の伝奇時代小説だ。時代設定を十分に生かし、ホラー小説のエッセンスを注ぎ込んだ作品、といえる。そういう意味では菊地ファン以外の読者をも引きつけることができる作品かもしれない。
 不死の男、奥月桔梗が天下大乱の世にどのようなかかわりを持つことになるのか、そのあたりに注目して続刊を待ちたいと思う。

(1998年4月8日読了)


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