また新人作家がデビューした。
イギリスのスパイの働きでドイツ戦艦ティルピッツは完成前に大破、ドイツはイギリスとの戦いに空母グラフ・ツェッペリンを投入する。グラフ・ツェッペリンとUボートには日本からきた軍人が同乗、酸素魚雷など日本の兵器を駆使し、イギリス艦隊と史上初の空母決戦が展開される。
指名を果たして死んだイギリス人スパイの弟、スパイが利用した若い女性の婚約者であるドイツ兵士、そのドイツ兵士の父親(日本人)を知る日本軍人と、少しの接点だけでつながる人々が戦場で運命の糸に操られるように命のやり取りをしていく。そうやって織り上げられる人間模様が本書の特徴。それを柱に書きたかったのなら、必ずしも架空戦記である必要はなかったのではないのかな。わざわざ歴史を変えるということは、空母決戦が行われることで歴史の歯車を動かしたかったのだろう。それと人間模様とがうまくかみあっているかというと、私には不十分であるように思われてならない。
それなりに筆力のある新人だから、テーマの絞り込みをすればもっと締まった作品になったことだろう。
(1998年4月11日読了)