5年半ほど前の作品をなぜ今読んでいるかというと、このシリーズの続編が最近でて、慌てて買っていて読んでいなかった旧刊を引っぱりだしてきたということだ。こういうのを泥縄という。
舞台は「妖怪寺」と呼ばれる秩父にある寺。ここは代々妖怪たちを守る寺なのだ。主人公はこの寺の後継者、蔵人。身長2m近い大男で、ゴジラだのゴリラだのと呼ばれてしまう筋骨たくましい若者だ。
「妖怪寺」の本尊の観音像から、中に封じられていた鬼が出現して、物語が始まる。鬼は過去に彼を封じた3人の行者とその子孫に深い憎悪を抱いている。一人は蔵人。もう一人の邦彦という青年にとりついた鬼は、行者の子孫が分け持つ珠と輪を奪うために全国を飛び回る。蔵人は親友である蛇男の仁巳、邦彦の妹で気が強い少女の多輝とともに、輪のある京都は洛西へ向かう。果たして鬼はそこに出現。これがなかなか強く、蔵人たちもこのままではかないそうにない。それにどうやら邦彦には鬼だけではなく、別の人格もとりついているようだ。行者の子孫で超能力を持つ子ども、和馬と花也も加わり、物語は佳境へ……。
なかなか面白い話だ。この作者の他のシリーズも読んではいるが、そちらもスケールの大きな話だった。実力派の作家だと思う。上巻だけで判断するのはよくないけれど、下巻、そして最近でた続刊も大いに期待できそう。
まとまった感想は下巻を読んでから、ということで。
(1998年4月12日読了)