日露戦争で敗れた日本は、戦訓から経済大国をめざすようになり、中立国として第一次世界大戦では軍需に沸き、一流国の仲間入りをする。それに対し、対日赤字貿易に苦しみ、また、第二次世界大戦で連合国と枢軸国の両者に武器を売り黒字を増やす日本を敵としたアメリカ大統領ルーズベルトは、経済封鎖で日本を追い込み開戦にもちこむ。かくして太平洋戦争が始まるのである。
これは史実の太平洋戦争後、経済大国となった日本の現状を日露戦争後に置き換えることにより、現在の日本が今後どのような道をとるべきかを問い掛ける意図があるのだろう。これからの架空戦記にはこのような文明批判的側面がないと、結局は先細りとなるように思う。
ただ。本書は着想は面白いのに、小説の書き方はやはりうまくない。例えば、女飛行士と上官がいい仲になっていたのに戦闘の中で行き違いになり心が離れていくというエピソードがそう。うまく書けば話にふくらみをもたせられるだろうに、読んでいてとってつけたように感じられる。けっこう冊数を書いてるのにこうなのだ。こうなるとセンスの問題としかいいようがない。
もひとつ。
あとがきで「SFまがいのスーパー兵器は納得できませんし、人間だって神様ではないのです」と書いている。だからあ、SFというのはそうじゃないんだよ。ちゃんと理屈をつけて納得できる兵器をだすのがSFで……。わかってないんだなあ。
(1998年4月19日読了)